HOME > 事業内容 > 最近の話題 > 平均値に関して広まった迷信? > 平均値の種類とその使い分けの方法
「平均値」とは一般に以下のとおり定義されるものであるが、平均値には算術平均や加重平均など複数のものが存在しており、平均値を使う目的(=その平均値がどのように使われるか)に応じて使い分けられている(表 1)。
<平均値の定義> 対象とする集合のデータがすべてある値だと仮定したとき、基準となる値が実際のデータで算出した場合と同じになるとき、そのある値のことを当該データの平均値という。 |
【表 1 平均値の種類とその使われる条件等】
平均値の種類 | 平均値が使われる条件 | 平均値が使われる場面(例) | 計算方法 |
算術平均 (相加平均) |
対象とする集合のデータを足し合わせることによって基準となる値が算出される場合 | ①学級ごとの英語のテストの平均点 ②チェーン店に含まれる複数の店舗の平均売上額(円/年) |
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加重平均 | 対象とする集合のデータに別の値を乗じてから足し合わせることにより、基準となる値が算出される場合 | ③世帯主の年齢階層別の平均貯蓄額(円)から算出される全世帯の平均貯蓄額(円) ④下水処理場からの放流水に含まれる全窒素の平均濃度(mg/L) |
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幾何平均 (相乗平均) |
対象とする集合のデータを相互に乗じて基準となる値が算出される場合 | ⑤過去10年間の出荷額(百万円/年)の平均増加率(%/年) ⑥今後10年間で国内総生産(兆円/年)を20%増加させるのに必要な経済成長率(%/年) |
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調和平均 | 対象とする集合のデータで別の値を除してから足し合わせることにより、基準となる値が算出される場合 | ⑦往路と復路の全体での平均速度(km/h) ⑧電気回路に並列で複数の抵抗(Ω)がある場合、それらの抵抗の値の平均値 |
【表 2 平均値の種類とその使われる場面の例】
平均値の種類 | 使われる場面(例) | ||||
具体例 | パラメータ | 対象となるデータの平均値の考え方 | |||
対象となるデータ | 基準となる値 | ||||
算術平均 (相加平均) |
① | 学級ごとの英語のテストの平均点 | 個人別の英語のテストの点数 | 学級全体の英語のテストの合計点 | Aクラスの全員がある点数だと仮定した場合、Aクラスの英語の合計点は、ある点数が算術平均と同じ場合に実際の合計点と同じになる。 ➔ 算術平均の算出例 |
② | チェーン店に含まれる複数の店舗の平均売上額(円/年) | 店舗別の売上額 (円/年) |
全店舗の合計売上額(円/年) | すべての店舗がある売上額だと仮定した場合、チェーン店全体の合計売上額は、ある売上額が算術平均と同じ場合に実際の合計売上額と同じになる。 | |
加重平均 | ③ | 世帯主の年齢階層別の平均貯蓄額(円)から算出される全世帯の平均貯蓄額(円) | 年齢階層別の平均貯蓄額(円) | 全世帯の合計貯蓄額(円/年) | すべての世帯がある貯蓄額だと仮定した場合、すべての世帯の合計貯蓄額は、ある貯蓄額が加重平均(年齢階層別の世帯数で重み付けした値)と同じ場合に実際の合計貯蓄額に一致する。 ➔ 加重平均の算出例 |
④ | 下水処理場からの放流水に含まれる全窒素の平均濃度(mg/L) | 下水処理場別の放流水に含まれる全窒素の濃度(mg/L) | 全国のすべての下水処理場からの放流水による全窒素の合計排出量(kg/年) | すべての下水処理場の放流水がある濃度だと仮定した場合、すべての下水処理場の合計排出量は、ある濃度が加重平均(下水処理場の放流水量(千m3/年)で重み付けした値)と同じ場合に実際の合計排出量に一致する。 ※下水処理場ごとの全窒素の濃度変化が無視できる場合 |
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幾何平均 (相乗平均) |
⑤ | 過去10年間の出荷額(百万円/年)の平均増加率(%/年) | 年ごとの出荷額の増加率(%/年) | 最新年の出荷額 (百万円/年) |
10年前の出荷額(百万円/年)を出発点とし、その後、出荷額の増加率がすべての年である値だと仮定した場合、算出される最新年の出荷額(百万円/年)は、ある値が幾何平均と同じ場合に実際の出荷額と一致する。
※厳密には「増加率」を「対前年比率」と読み替えた場合に上記の関係が成り立つ。 ➔ 幾何平均の算出例 |
⑥ | 今後10年間で国内総生産(兆円/年)を20%増加させるのに必要な経済成長率(%/年) | 年ごとの経済成長率(%/年) | 今から10年後の国内総生産(兆円/年) | 現在の国内総生産(兆円/年)を出発点とし、その後の経済成長率(%/年)がある値で一定だと仮定した場合、今から10年後の国内総生産(兆円/年)が現在より20%大きな値となるのは、ある値が年ごとの経済成長率(%/年)の幾何平均と同じ場合である。
※厳密には「成長率」を「対前年比率」と読み替えた場合に上記の関係が成り立つ。 |
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調和平均 | ⑦ | 往路と復路の全体での平均速度(km/h) | 区間(往路/復路)ごとの速度(km/h) | 出発地点に戻ってくる時刻 | ある時刻に出発して往路と復路を同じある速度(km/h)で移動する場合、出発地点に戻ってくる時刻が実際と同じになるのは、そのある速度が往路と復路の速度の調和平均と同じ場合である。
➔ 調和平均の算出例 |
⑧ | 電気回路に並列で複数の抵抗(Ω)がある場合、それらの抵抗の値の平均値 | 並列回路に存在している各抵抗の値(Ω) | この電気回路に流れる電流(A)の合計 | 並列回路に存在する複数の抵抗がすべてある値(Ω)だと仮定した場合、この回路全体に流れる電流(A)が実際の回路と同じになるのは、そのある値が各抵抗の値の調和平均と同じ場合である。 |