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平成25年度の要調査項目リストの見直しについて

文責 : 山下 裕子
平成26年6月19日

要調査項目リストとは

   河川等の公共用水域の水質は、人による利用や水生生物の保護の観点からの管理がなされており、人の健康へ影響を及ぼす物質と水生生物へ影響を及ぼす物質とは一般に異なることから、それぞれについての管理体系が構築されている。「環境基準」や「要監視項目」の予備軍として情報収集の対象とされる物質が「要調査項目」であり、要調査項目については人の健康と水生生物への影響の両方の観点から物質選定を行っている。但し、これらの物質は1つのリストとして作成されており、平成10年度に公表されたリストは当初300項目(物質群)を含むものであった。

ホルムアルデヒド濃度の推移
  • 水質の管理体系のイメージ
  •  

    平成25年度の見直し

      平成10年度に公表された要調査項目リストは、公表から15年間は見直しが行われず、平成25年度に初めて見直しが行われた。見直しにおける選定方法の原則は平成10年度のときとほぼ同じであり、国内外の法規制等の動向や製造・輸入量を基本として選定された。一般的には、水環境中での存在状況は、製造・輸入量の多寡のみならず、用途にも大きく依存する。しかし、多くの物質を同一の指標で評価する必要があったことや、可能な限り分りやすい評価方法が望ましいとの考え方に基づき、製造・輸入量を基本的な指標として選定する方法が採用された。
      その結果、人の健康に係る項目として137項目、水生生物への影響に係る項目として 105項目、重複(34項目)を除く、合計で208項目が新たに選定され、平成26年3月末に公表された。
      なお、見直しにおいて、約90物質(物質群)は見直し前のリストから継続している物質であったが、残りの半数以上の物質は新規に要調査項目として選定された。
      当社は、平成25年度のリストの見直しにおいて、人の健康に係る項目の選定を中心として携わった。

     

    要調査項目リストに係る課題として考えられること

      要調査項目として選定された物質については、継続的な情報収集が実施されることとなるが、「情報の収集」と「情報の活用」はセットとして考えるべきものである。特に、モニタリングデータの蓄積には、ある程度の時間と費用がかかることから、長期的な見通しを持って調査にあたることが重要であると考えられる。

    ホルムアルデヒド濃度の推移

      将来的な「情報の活用」を視野に入れた「要調査項目リストに係る今後の課題」としては、以下のようなものが考えられる。

     

     ●  要調査項目リストにおける情報収集の優先度

      要調査項目リスト作成後の平成11年度より、「要調査項目等存在状況調査」として、要調査項目を中心とした水質モニタリングが継続的に実施されている。平成11年度〜平成24年度の間に測定された物質数は201であり、残りの99物質(物質群)については過去に1回も測定が行われていない。また、測定が行われた201物質でも平均して約130地点で測定したに過ぎず、リスク評価等に活用するのに必ずしも十分なデータ数ではない。
      過去のモニタリング調査の実績(詳細は、「参考:過去のモニタリング調査の実績」に示す)を踏まえると、要調査項目リストの見直し後も208と物質数が少なくはないことから、仮に次のリストの見直しが10年後だとしても、それまでに十分な数の測定が可能な物質は一部に限られると見込まれる。したがって、要調査項目リストに係る情報収集の優先度を設定するなど、メリハリをつけた情報収集が必要だと考えられる

     

     ●  モニタリングデータの「賞味期限」

      要監視項目等の位置づけの検討やリスク評価で活用するためのモニタリングデータは複数年に亘ることが一般的である。過去の要調査項目等存在状況調査においては、10年以上前に測定した平成11年等のデータも多数存在するが、化学物質の使われ方など世の中が大きく変わりゆく中で、著しく古いデータを使ってリスク評価等を行うのは正しくない結論につながるおそれがある。それにも関わらず、リスク評価等における古いデータの扱い(直近のデータと同等のものとして利用可能か)については、系統的な議論がなされていない。
      したがって、要調査項目リストに係る効率的なデータ収集のためには、予めモニタリングデータの「賞味期限」の考え方について系統的な整理が必要と考えられる

     

     ●  モニタリングにおける定量下限値

      既存の要調査項目等存在状況調査における定量下限値については、必ずしも物質の有害性のレベルを考慮して設定されたものではない。しかし、将来的に要監視項目等を見据えた検討を行う際には、指針値相当の値に対する超過状況が重要な評価指標になると考えられるため、「超過状況の評価」に活用可能なデータが得られるように定量下限値が設定されることが望まれる。ただし、 有害性についても今後の新たな知見によって評価値が見直される可能性もあることか ら、見直しの可能性を視野に入れて、一定程度の「マージン」を持たせた形で定量下限値を設定するなど、戦略的にデータの蓄積を進めることが考えられる

     

    (参考)過去のモニタリング調査の実績

      仮にモニタリングデータの「賞味期限」を過去10年程度と仮定した場合には、平成24年以前の過去10年間では、要調査項目存在状況調査において127物質が測定されているものの、延べ測定地点数が150地点以上の物質は24物質、200地点以上の物質は11物質と限定的である。リスク評価等に活用できるような十分な地点数のデータが蓄積されているのは、当初リストアップされた物質のうち、ごく限られた物質であるといえる。

     

  • 要調査項目(見直し前)におけるモニタリングの状況(H15〜H24)
  •  延べ測定地点数
    該当する
    物質数
    具体的な項目の例
     200地点以上
    11
     銅及びその化合物、クロロアニリン類
     エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸
     150〜199地点
    13
     アンモニア(総アンモニア)、イソフェンホス
     トリフルラリン、アクロレイン
     100〜149地点
    32
     クロルピリホス、アラクロール
     2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)
     50〜99地点
    60
     オクタクロロスチレン、ジイソプロピルナフタレン
     1,3-ジクロロ-2-プロパノール、ニトロベンゼン
     1〜49地点
    11
     ジメチルアミン、トリエチルアミン
     トリエチレンテトラミン、ペンタクロロベンゼン
     ゼロ
    173
     アクリル酸エステル類、アジピン酸
     アセトニトリル、アセトン

      注:要調査項目等存在状況調査(H15〜H24)に基づき作成

     

       なお、同調査が開始されてからの数年間は、1年間に20〜60物質程度の測定を実施していたが、平成21年度以降は10物質程度の規模となるなど、モニタリング調査は近年縮小傾向にある。

  • 要調査項目等存在状況調査の測定物質数等
  •      注:要調査項目等存在状況調査(H11〜H24)に基づき作成